社長の溺愛・番外編



それからは母さんたちのテンションに付き合わされて大変だった


ふと、気づいた時にはもう既にいつもなら翼が寝る時間になっていた程騒いでいた



夕飯でも出た今日何個めかのケーキをまるで敵を見るように顔をしかめている彼女を抱き上げる



「しぃー…おなか、いっぱい」

「もう食べなくていいよ、眠いんだろ」

「………むぅー」



トロンとした瞳で唸り声を上げた翼はしばらくすると肩に頭を預けて睡魔と戦っていた



「父さん、そろそろ翼寝かせないと」

「そうだな。今日はもう泊まって、慎の部屋を使いなさい」

「ああ、悪いけど母さんは頼むよ」

「大丈夫だよ、つーちゃんおやすみ」

「………ぱぱ、おやすみ」



俺も俺でワインやら日本酒やらと結構呑んでいたので車は運転出来ず、父さんたちに甘えて昔使っていた部屋で寝ることにした



リビングを出てすぐの階段を上がり突き当たりのドアを開けば物は少ないがベッドや机はそのままにしてあった



夢うつつな翼をベッドに寝かせると洗い立てだったらしく太陽の香りが鼻を掠めた



「しぃ…服…やだ…」



いつもとは違う大きさのベッドで寝にくい服を着ている翼が可愛らしく駄々をこねている



「服だすから、頑張って脱いでおいて」

「うー……ん」



分かっているのかいないのか、定かではないがのそのそと動き始めたのを確認し苦笑を浮かべた



昔の服くらいはあるだろう、と備え付けのクローゼットを開ければビンゴ


家を出るときに置いていった物がきれいにしまってある


その中から適当にシャツを抜き取ってベッドで未だにのそのそと動く翼の手伝いをする



「………ぶかぶか」

「だな、まぁ仕方ない。もう寝ていいよ」

「はぁい……慎も」

「あぁ、着替えたらな」



< 107 / 136 >

この作品をシェア

pagetop