社長の溺愛・番外編



きっと彼女のことだから聞いてすぐに行動したんだろうと脳裏に思い浮かべる



「勉強は?もうすぐテストだって聞いたけど」



ちらり、キッチンで母さんと楽しそうにしながら一生懸命何かをしている翼を目のはしにとらえる



「再来週だってー」



今年、高校を卒業する翼は最後のテストを頑張りたいらしくここ最近は毎日勉強漬けだった



ちなみに進路はほぼ誘導尋問に近い形でwingのデザイナーに決まっている


幼い頃に離ればなれになってから、一年前まではひとりで外に出ることさえも許されず愛も希望もひととの接し方さえも知らなかった翼



その彼女が今じゃ同じベッドで寝て、起きて一緒に料理を作って


運命というものの強さを感じる


仕事終わりに身体に沁みる味噌汁を一口飲んで一息、思い出したようにネクタイを緩めてボタンを開ける



と、パタパタと可愛らしい足音がしてそちらを見れば愛しい彼女が腰を下ろしたとこだった



「終わったのか?」

「……生地焼いてるから待ってる」

「うまく出来そう?」

「……美味しく出来たら慎にあげる」

「そう、ありがとう」



バレンタインは好きなひとにチョコを渡すと教えてもらった翼が俺にくれると言ってくれただけでも嬉しい



< 115 / 136 >

この作品をシェア

pagetop