社長の溺愛・番外編
「眠いんだろう、明日も学校なんだから我慢するなよ?」
「してない……まだ寝ないの」
胸板に寄りかかりながらうとうとしているくせに頑なに寝ることを拒否する翼
大方、理由は製作途中のお菓子なんだろうがゆっくり寝かせてあげたい気持ちもある
箸を置いて長い髪を梳きながら頬を撫で、眠りに促すように揺りかごのように揺れると彼女は抗いながらも身体には力など残っていない
「ちょこ…」
「ああ、分かってるよ」
次に起きたらな、と心の中で呟けば、数分もしないうちに仔猫は眠りの世界へと堕ちていった
「つーちゃんを二階に連れてこうか?」
安心しきった寝顔を飽きもせずに眺めていると父さんが脇から話しかけてくるので首を振る
「翼が服掴んでるから」
微力だが確かに掴まれているスーツを見せれば父さんは優しげな笑みを浮かべる
「つーちゃんは寝ても覚めても慎が中心なんだな」
「ああ、ありがたいことにな」
顔にかかる髪を払えば肌寒さを感じたのか隙間に潜るようにしてぴったり身体をくっつける仔猫ちゃん
「はいはい、ベッドに行こうな」
苦笑を浮かべながらも可愛いらしい行動に既にやられている俺はとことん甘く、とても大人とは言えない
それから静かに抱き上げて起こさないように注意を払いながら二階へ
そのまま夢の中へと深く沈ませた