社長の溺愛・番外編



―――――……翌朝



早い時間に寝たせいか翼の起床はめずらしく早く、まだ鳥しか鳴いてないような時間に隣が騒がしい



騒がしさの張本人を抱き寄せようとベッドをさ迷う俺の手


しかしそれは彼女の温もりを掴むことはなく、朝の冷たい空気に触れて終わる



「………は?」



朝一番に彼女が隣にいないことを知り一気に気分が下がる


眉間に皺を寄せ眠気に抵抗するように瞳を開けるとそこには小さな背中がある



「……翼、どうした?」



振り向いた翼は昨晩寝かせたままの格好でどうやら部屋を出ようとしていた所らしい



「しぃ……」



消え入りそうな声をあげた翼は何故だか瞳に涙を浮かべている


それに異常に反応した俺は頭の隅で困惑しながらも朝一とは思えない動きで駆け寄る



「おいで、どうした?そんな顔して」



すぐに抱き上げて涙が溜まる目元に唇を付けると首元に顔を埋めて頭を預ける


そして小さな声で言葉を紡ぐ



「…ちょこ……寝ちゃったから、だめになる」



やだやだと鼻を啜る音が耳に聞こえてくる


昨晩、予想した通りの結果に思わず苦笑を浮かべる



「大丈夫だよ、昨日母さんが生地を残しておいてくれたから」



「…ほんと?」



こんなこともあろうかと思ったらしい母さんが昨日作っておいてくれたのだ



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