社長の溺愛・番外編

婚姻届はいつにする?




卒業式は何週間も前に終わっていたその日だった


学生でも社会人でもない翼は今日も会社に来て、一足早く仕事をしていた



仕事といっても相変わらず職場は社長室で、デザイン画を書いていくという以前と何ら変わりのないスタンスである



人事異動や会議が重なる今はなかなか翼を甘やかすような時間もなく、ついでに言えば婚姻届けを出す時間もない



ぱぱっと書いて、幸弘にでも預けて代理で出してもらえばいいのかもしれないが、翼の一緒に役所で出したいとお願いされたら仕方ない



そこで本当は今日、役所に行くはずだったのだが生憎のこと会議が入り予定が狂ってしまった



「翼ー、終わったよ」



社長室に入りすっかり疲れきった身体を癒してもらうために、愛しの仔猫ちゃんの姿を探すも声が帰ってこない



もしかしたら、と思いソファーに近づいて上から覗くと予想通り


小さく丸まった翼がタオルケットに包まって可愛い寝顔で迎えてくれた



翼は長年の不安定な生活からようやく抜け出し、昼寝なども必要なくなってきていたのだが…



少し気を抜くとぱたりと眠ってしまうのは翼本来の癖らしい



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