社長の溺愛・番外編
「むぅー……」
沈みかけた夕日が眩しかったのだろう
翼が小さく唸り声を上げながらゆっくりと目を覚ました
「………しぃ?」
寝惚け眼で俺に気がつくと両手を伸ばして抱っこをせがむ
うん、可愛い
「暖かくて寝ちゃった?」
「うん…ぽかぽかした」
すりすりと、胸元に温もりを求めるように頬を当てきゅっと俺のスーツを掴む
婚姻届けは年中無休、夜間受付可能な書類なので本来ならば出していてもいいのだが
なるべく翼の生活習慣を崩したくなくて遠延ばしにしてきた
右手を持ち上げて時計を確認すると時刻はまだ夜には遠い
「翼、今日役所に行こうか」
「……結婚しますのやつ!」
「そう、時間も出来たしな」
「行く!」
眠気なんて嘘のように飛ばしてきらきらした瞳をこちらに向けて早く!とまるで急かすように服を掴む
「じゃあ上着、着ておいで。まだ肌寒いから」
「はーい」
すとん、と腕から旅立った彼女はぱたぱたと足音を鳴らしてかけてあったそれに腕を通す