社長の溺愛・番外編



いつも寝るときに抱いている慎からのプレゼントといえば『うさぎ』である


そのうさぎが、1匹、2匹、3匹と家のなかではしゃいでいる


翼はベッドの上でぽつんと、はしゃぐうさぎたちをじっと見つめているだけ


慎はどこかに行ってしまって、帰ってこないのだ


その寂しさをうさぎが紛らわそうとしてくれているらしく、ぴょんぴょんと翼ほどある体で必死に動いている



「うさぎ…どうして3匹なの?」

「翼ちゃんが寂しがりやさんだからだよ。1匹じゃ足りないの」

「慎は、どこにいるの?」

「夢の外だよ、ずっと遠く」

「じゃあ、起きる!ばいばい」


ばふん、とベッドに寝転びタオルケットに包まった翼は一生懸命に目を瞑る


しかし、なかなか寝れない


どんなに目を深く瞑り、意識を無くそうとしても頭のなかでうさぎが話しかけてくるのだ



「うさぎ…だめ…慎に会いたいの」

「今起きても、いないよ?」

「でも、起きなきゃ」

「一人ぼっちになっちゃうよ?翼ちゃんが一人ぼっちになるのはやだよ」

「うさぎも一緒にいこ」

「夢の外に?」

「うん、いこ」


ベッドの隣をぽんぽん、と叩いてここにおいでと呼ぶ仕草はいつも寝る前に慎がしてくれるものである


3匹のうさぎは見つめあって相談していたが、いつの間にか2匹、1匹になっていた

うさぎはぴょんっとベッドに移ると布団の中へと入り込む

そして彼女の腕のなかにするすると入ると魔法をかけた


よく眠れますように。



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