社長の溺愛・番外編
ふと、目を覚ました時には夕陽が沈みかけていた
最近、翼のデザインする商品が飛ぶように売れ、休む暇もなく仕事をしていた彼女は自分が疲れていることに気づいていなかった
久しぶりにぐっすりと、お昼寝できた
夢の中でうさぎが魔法をかけてくれたおかげなのだろうか、身体の疲れもすっきり取れていた
「ん……」
身体を起こしてきょろきょろ
すると、ソファーの下に何かがよりかかっているのが見える
手を伸ばして抱き上げると、それは紛れもなくいつも抱いてるうさぎだ
朝、確かにリビングに置いてきたはず
「うさぎ…どうやって来たの…?」
そう問いかけてもだらん、としている抱き枕。夢の中でみたうさぎとは思えない
どうせ答えてくれないだろう、そう分かっていてもなぜここにうさぎがいるのか不思議でならない
が、しかし、そんな考えに終止符を打つベルが鳴った
ガチャ、という音とともに、愛しい彼が帰ってきたのだ
「翼、いいこで待ってたか?」
「慎!まってた!うさぎと!」
「んーそうか、えらいえらい」
いつ見てもかっこよくて大好きな慎は、大きな手で頭を撫でてくれる
「うさぎがね、ひとりで来たの」
「ん?うさぎが?そりゃすごいな」
くすくす笑いながらうさぎにもえらいえらい、と声をかけている彼はすっきりした表情の翼に満足する
ーーーお昼寝だって、翼の仕事だ
こっそり部屋を覗いた幸弘は、車のキーを指で回しながら、うさぎを担いで会社に戻ってきたことを思い出す
まるで不審者扱いだったが彼女の幸せのためなら誰だって不審者になるだろう