社長の溺愛・番外編
言葉にした覚えはないのに顔にはガッツリ出ていたらしい
証拠に慎さんにめっちゃ睨まれる
いやいや、しょうがないだろキモいんだから
「おい、南月」
「さーせん、思春期なもんで」
明らかにイラついた表情を見せるイケメン富裕層
「もう遅刻しちゃうんで行きますねー、“翼と”」
まじでヤンキー顔負け、ヤクザも帰る気迫を身にまとう慎さん
朝から物騒だな、いやだね最近の若いひとは
「翼、行くよ」
「うん。あ、今日は慎の好きなご飯だからね」
ツキン…悲しいような微笑ましいような胸の痛みは今ではもう随分よくなった
「ん、楽しみにしてるよ」
ふわり、最後にひとつ笑顔を見せた慎さんは翼が歩き出すのと同時に車を動かした
いつもと変わらない毎日のなかで
俺のなかの何かは薄くなって消えていく
決してそれが嫌なわけではない、むしろいいと思っている
しかしそれと同時に残念な気持ちもある
上手く言葉で表すことはできないけど
大人になりつつある今日この頃
考え方や見方もほんの少しづつだけど変わってきているんだと思う
そんな微妙な心境のなかだからなのか、最近やたらと思い出す
あの日、あの時――――……