ミルクチョコレート味の恋
「だから、大丈夫だって…」
「君は大丈夫でも俺がダメ。俺がしたいんだからやらしておいて。悪い、とか思って遠慮してるんなら遠慮なんかすんな。」
男の人があった、と呟いて食い下がる私に「な?」と笑顔を向ける。
不覚にも、その笑顔にドキッとした。
「偉そうな事言わないでよ。」
「ただ本当の事を言っただけだよ。」
手の甲で顔を隠しながらそっぽを向くと、男の人が再び床に膝をついてクスリと笑う。
きっと、私の頬が薄く色付いているのが分かったんだろう。
「何で顔赤いの?」
銀色の入れ物から赤いものを取り出しながら聞いてきた。
何でか、なんて分かってるくせに。
「別に!」
少しムカついて力強く言い放つ。
すると、「怒るなよ。」と楽しそうに笑って男の人は私の膝に赤い色をした消毒をぴとりと引っ付けた。
「…っ、」
それが傷口に染みて顔を思わず顰める。
「少し我慢して。」
それに気付いたらしい男の人が私の傷に息を吹き掛ける。
その行為で少しだけ傷の痛みが和らいだ。