ミルクチョコレート味の恋
騒ぐ左胸を手で押さえる。
と、廊下から何かを呼ぶ声が聞こえてきた。
「あ、友達が呼んでるからもう行くわ。」
男の人が廊下に響く声を聞いて保健室の出口へと向かう。
その後ろ姿に声を掛けようとして口を開いた。
と同時に男の人が振り返って
「また会えるといいな。」
爽やかに笑いかけてきた男の人に見とれて何も言えないまま、扉の閉まる様子をジッと見ていることしか出来なかった。
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―――――
――
「…って感じなんだけど…。」
「え、ちょ…みや、一番肝心なところがない!!」
今さっきまで何があったのかを話し終えて息をひとつつく私に、綾が詰め寄ってくる。
そんな綾の反応に、何で?と首を傾げて目を数回、ぱちぱちとさせた。
「何でじゃないから!その男がどういう人なのかとか、どのくらいカッコいいのかは分かった。
分かったけど、肝心な名前が分かってないじゃん!」
「あ。」
「………まさか、今まで気付かなかったんじゃ…。」
目を見開いている綾にエヘヘと苦笑いを向ける。