side雫


おじぃちゃんの部屋を出て、玄関へと向かう。
その途中で、おばさんに会った。
「あら、雫ちゃん」
「あの、母から連絡があったので、今日はこれで失礼します」
「あら、そうなの~?」
「はい。今日はありがとうございました」
「また、来てね?」
「はい、ぜひ」

あたしはお辞儀をして、優心の家を出た。

ぽつぽつと、雨が降り出す。

玄関を出てすぐに、優心が走ってくるのが見えた。
「雫…ッ」
優心は、そのままあたしに抱きついた。

「優心、どうしたの…?」

優心はあたしを一旦離す。

「なんか分んねぇけど…、買い物終えたころ…、スッと体が楽になる感覚になったんだ。
変だと思って、周りの人の心、読もうとしたけど、できなくて。全然、聞こえなくて。
俺、能力…消えたみたいなんだッ」

その顔は、とても嬉しそうで。

「よかったね、優心」

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