side優心




「おはよう」

朝、ふわりと笑って挨拶をした雫にどこか違和感を覚える。

「雫、何かあったか?」
「え?何もないよ」
「…そっか」
「そうだよ。早く行こ?」
「あ、あぁ…」


* * * 

もしかしたら、この時からかもしれない。

俺たちの間に、溝ができ始めたのは。

いや。


俺が、溝を広げたのかもしれない。

だって、雫は…。


いつだって、真っすぐに俺を見てくれていたのだから…。


いつだって、

ただ、真っすぐに……

俺を、好きでいてくれたのだから…。


――その、温かい手を手放したのは。

他の誰でもなく、

俺だった。

< 83 / 88 >

この作品をシェア

pagetop