秘密。
早く…早く…早く、来てよ…。
チン! と、音を立てて、ようやくエレベーターの扉が開いて、私は中に入ろうと一歩足を踏み出した。
「ぁの! 待って!!」
振り返ると、そこにはさっきまでシノブ君の隣にいた女性が、私に向かって小走りしてる。
「………何ですか?」
「あのね。誤解しないでほしいの! 坂上君はちゃんとあなたの事が好きなの」
下手な慰めしないでほしい…。とっさに浮かんだ感情は、あまりにも醜いものだった。……だって、あなたはシノブ君が好きなんでしょう? そんな人に慰められたくない。
「……そうですか……」
その一言を残して、私はエレベーターに乗り込んで、扉を閉めた。
誰一人乗っていないエレベーターで私は、緊張の糸が切れたのか両目からポロポロ涙が零れる。
溢れて止まらない。シノブ君の想いも止まらない…溢れるばかり……。