秘密。
ため息を吐いて、家に帰ろうとゆっくりと歩き出した私の背後から、自分の名前を呼ばれた気がして辺りを見回した。
…もしかして、シノブ君じゃないのかと思って後ろを振り返った。
「カナコちゃん!!」
「……タケ、ルさん…?」
息切らしてタケルさんは、両膝に手を突いて呼吸を整える。
「だ、大丈夫ですか?」
「ぁ、はぁ…う、ん。……だ、大丈夫…大丈夫!」
にっこりと笑うタケルさんに、何となく引いちゃった私の顔は確実に彼にわかってしまったんだろうな…。
「あぁ、ごめんごめん。最初の大丈夫は俺の事で、二度目の大丈夫は君らの事だよ」
「……どういう事ですか?」
訳が分からないと、言うとタケルさんは満面の笑みで携帯を取り出して、イジリながら喋りだす。
…何だ、この人は…。人と喋る時って、何か弄りながら喋るのって私は、苦手だな…。