雫-シズク-
だれかが、僕の手をぎゅっとにぎっている。


なんとなく横を向くと、葵さんの顔が見えた。


「……あおい、さん?」


少しおどろいた僕を葵さんがじっと真剣に見つめている。


「お前叫んでたぞ。今まで小さく泣くくらいだったから、さすがに俺もびびったわ」


ちゃんと目が覚めた僕を見て、ほっとしたみたいに笑った。


ああ、葵さんだったんだ……。


その手はまだ僕を強くにぎっている。


そこで僕ははっと気付いた。


一人ぼっちになってから初めて守ってくれたこのぬくもりを、ずっとずっと待ち続けていたことに。


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