雫-シズク-
そして佐藤さんから聞いた本当のことを吐き出す。


「二人っ、二人とも、自殺したんだ……!僕を、ううっ、僕を捨てて……!ううううっ」


そこから僕は誰にも言えなかった両親のことを葵さんに話し始めた。


動かない二つの体を見付けてしまったあの日のことから今日までの自分の気持ち。


自殺だと知ってなにも信じられなくなって、一生懸命しがみついていた大切な記憶がゆるせなくなった自分。


二人が怖くてにくいぐちゃぐちゃの心。


自分でもなにを言っているかわからない言葉を葵さんはじっと聞き続けてくれた。


そんなことを息をするのも忘れて話していると、急に部屋の外ががやがやさわがしくなっているのに気付く。


はっとして時計を見ると、もうみんな起きてくるころだ。


こんな時間まで葵さんに自分の気持ちをぶつけてしまった僕は、あわてて口をつぐんだ。


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