雫-シズク-
「俺の体傷だらけなの知ってるだろ?それって自分でやったのもあるけど、ほとんど母親にやられたんだ」


僕は言葉が出なかった。


なんて答えればいいのかわからなくてだまっていると、葵さんは話を続けた。


「俺が小さい時に離婚して母親と二人暮らしになったんだけど、……地獄だったよ。毎日毎日殴られたり煙草で焼かれたりで、お前くらいのころにはもう慣れてた」


くすりと小さな声で葵さんが笑ったけど、なにがおかしいのかわからない。


僕はマンガを持ったまま少しも動けなくなった。


「そんで、小五の時だったかな。虐待がどんどんエスカレートしてさ。風呂のお湯に頭漬けられて死にかけた時、保護されてここに来たわけ」


葵さんがむくっと起き上がって、そのままベットの上であぐらをかいた。


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