雫-シズク-
自分のことじゃないみたいにあきれた顔をする葵さんがすごく不思議だったけど、それと同じくらい悲しかった。


僕なら絶対そんなふうに笑えない。


前から思っていたけど、やっぱり葵さんは強いんだ。


きっと葵さんだけじゃない。


ここにいるみんなだっていろんな傷を持っているけどちゃんと生きている。


そう思うとやっぱり自分の親は大人のくせに逃げた弱いやつらにしか思えなかった。


僕の心の中にまたちろちろとにくい気持ちが燃え始める。


でも今はそんなものよりも、僕なんかに話してくれた葵さんの気持ちの方がうれしい。


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