雫-シズク-
「……強いんですね」


感じたことをそのままぽそりとつぶやいた僕を葵さんがおどろいた顔で見る。


そしてさぁなとだけ言ってまたベットに転がった。


僕はこんなに自分のことを話す葵さんを見たことがないし、嫌なことは言いたくないんだろうなとずっと思っていた。


それにどうして今こうやって話してくれたのかもわからない。


だけど。


なんだかちょっとだけ自分が認められた気がして、一年たっても遠かった葵さんとの距離がぐんと近付いたみたいに感じた。


それから僕も葵さんもだまってしゃべらなくなったけど、まわりの空気はいつもよりふんわりしていた。




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