雫-シズク-
……でも本当は憎んでないはずなんかないよ。


ちゃんと教えてくれない葵さんに腹が立ってしまう。


そしてどんな親でもいるだけマシじゃないかと胸の奥で文句を言った。


「お前は憎い?」


葵さんにそう聞かれてすぐに答える。


「憎いですよ!当たり前じゃないですか!葵さんに僕の気持ちなんかわからないんだ!」


そんな僕の大きな声のあと、暗い部屋の中がしんっと静かになった。


僕の心の真っ黒いどろどろがみるみる赤く変わっていく。


それのせいでこんなに好きな葵さんのことまでうらやましくて仕方なくなった。


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