雫-シズク-
俺の中学校生活はほんの一瞬だけなにかが変わるかと期待もしたけど、結局物珍しそうな目が増えただけだった。


知ってる奴から知らない奴へとどこに行っても噂は付きまとい、環境が変わったせいで余計面倒臭い思いをしている。


俺にとってはまた周囲を遮断する生活が始まっただけにすぎないから、一刻も早くまわりもそれを理解して欲しいものだ。


でもそういう風に強気でいられるのは、全て葵さんの存在のおかげだった。




「ねぇ、もうそろそろ漫画代くらいにならないの?」


5分ほど揉んだあと、葵さんに聞いてみる。


「あー、もうすぐ掃除だし許してやるか。それ読んでいーぜ」


「サンキュー、兄貴」


葵さんの横の椅子にぎしりと座り、早速俺は漫画を読み始めた。


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