雫－シズク－

突如静かな場内に少年の叫び声が響き渡り、それを聞き付けた人々が何事かと集まってきた。


まるでその場の全員が自分の行く手を阻む敵のように感じた少年が、全てを睨み付け叫ぶ。


「一緒に天国に行くんだ！僕もここに入る！」


そこが生きることを許されない業火の中だとも知らずに放たれた言葉に、ほとんどの人間の瞳に憐れみの色が浮かび上がる。


その時少年の方へずかずかと歩き出した一人の男が、あからさまに苛付いた表情で乱暴に少年の手を取った。


「静かにしなさい！ほら、こっちに来なさい！」


ぐいっと力強く引っ張る大人の力にいくら抵抗しても敵わないと絶望した少年は、体を震わせ断末魔のような凄まじい声で絶叫した。


「いやだあぁっ!!離してよおぉっ!!いやだああぁぁぁー!!」


ちっと舌打ちした男に無理矢理口を塞がれ、そのままずるずると場外へ連れ出される少年。