雫-シズク-
「こいつ、親からもっと酷くやられてるから平気だよ。お前部屋まで送ってやれ」


そんな……。


「本当に大丈夫なの?もし具合悪くなったら……」


もやもやする不安を抱えたまま葵さんと亮くんの顔を交互に見る。


「そんじゃ、間に合わなくなるから俺行くわ」


それだけ言うと葵さんはあっさり行ってしまった。


いや、俺だって学校あるんだけど。でもこんな亮くん、一人じゃとても帰れない。


仕方なく学校を諦めて、俺は亮くんを背負いよろよろと学園へ向かった。


途中、背中越しに亮くんが低い声で呟く。


「……わる、……い」


うんとだけ返事をしてなんとか転ばないように学園に着くと、人の気配に注意しながらこっそり亮くんの部屋に入った。


< 151 / 347 >

この作品をシェア

pagetop