雫-シズク-
「やっぱ学校面倒くせぇ」


俺の隣の椅子に勢いよくぎしっと座った葵さんは、あーあとあくびをしながら大きな伸びをした。


「ちゃんと行かないと卒業できないよ。何年高校通うつもり?」


俺の言葉に、ふんと鼻で笑って机にどしっと頬杖をつく。


「亮くん、どうしてあんなことになったんだろうね」


全然興味のなさそうな葵さんがそのままの体制で正面の壁を見上げた。


「手ぇ出してたのはあいつと同じグループの奴らだった。前に楽しそうにつるんでるの見かけてるしさ」


ってことは、仲間割れかな?


葵さんの横でじっと次の言葉を待つ。


「あ?あとは知らねぇよ?」


「え?そうなの?葵さんならなんか知ってると思ったのに」


「アホ、俺は情報通のおばちゃんか」


なにそれと笑ってからは、もう亮くんの話が俺達の間で出ることはなかった。


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