雫-シズク-
リーゼントが俺の横にしゃがんでなにか言葉を言ったけど、自分の耳鳴りがきんきんうるさくて全然聞こえない。


そして俺の顔の横にがしゃんとバットが放り投げられたあと、そいつらはぞろぞろと公園を出ていった。


「……うぅっ、……ぐうううっ」


それまで感じていた怒りや怖さが全て消し飛んで、痛いという感情だけに支配される。


それを普段人なんか近付かない薄暗い公園でぎりぎりと奥歯を軋ませ、ぶるぶる震えて耐えることしかできない。


だんだん頭の中に白いもやが立ち込めてきた。


もう目の焦点も合わない状態で浅く短い呼吸を繰り返しながら、意識がなくなることだけを願い続ける。


………早く、……早く楽になりたい。


結局脳が溶け出したようになにも感じなくなる最後の最後まで強烈な痛みは残ったけど、間もなく俺は全ての苦痛からやっと解放された。




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