雫-シズク-
心傷。
徐々に暗闇から意識を取り戻していくと、ぼやけた白い世界がじんわりと視界に広がってきた。


どこにいるのかわからなかった俺は、胸に残っていた危機感から反射的に跳び起きる。


「うわ!いたっ……!」


力を入れた左腕に激痛が走って、そのままベットに倒れ込んでしまう。


「つっ……」


ずきんずきんと響く腕を我慢して辺りを見渡すと、白いカーテンでぐるりと仕切られた狭い空間だった。


わずかに顔だけ上げると白いギプスが見える。


「……病院?」


少しずつ遠かった記憶が呼び覚まされてきて、ざわざわし始める気持ちを落ち着けるためにゆっくりと右手で顔をおおう。


そこで初めて目や頬にもガーゼのような物が貼り付けられているのに気付いた。


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