雫-シズク-
俺は目の前の受話器を耳にあてることができなかった。


「俺を殺そうとしたんだから、俺があいつら殺したって別にいいじゃねぇかよ!腹から血ぃ出してひぃひぃ言ってるマヌケのくせに!」


隣にいた桜井さんにも亮くんの恐ろしい言葉が聞こえたらしく、青ざめた表情で俺を見て叫んだ。


「圭介くん!亮くんが今どこにいるのか聞いて!」


俺が亮くんに伝えようと口を開いたのと同時に、また怒声が聞こえてきた。


「お前だってみんな死ねば嬉しいだろ!?安心すんだろ!?俺があんなゴミ片付けてやるからお前は黙ってそこにっ……、っうぅっ!」


小さな呻き声が聞こえて急いで受話器を耳にあてると、亮くんの息がはぁはぁと荒くなっている。


「ど、どうしたの!?あっ!」


急に桜井さんがおろおろした俺から無理矢理受話器を奪い取った。


「亮くん、今すぐ警察と病院に連絡するからあなたはそこを動かないで!バカなことはもうやめて!これ以上面倒を起こさないでちょうだい!」


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