雫-シズク-
重い足取りで食堂の電気をつけた桜井さんが、俺の正面の椅子にぎしりと座る。


俺は蛍光灯のあまりの白さに強い刺激を感じて目を細めた。


はぁっと深いため息をついた桜井さんが俺にぎこちない笑顔を見せる。


「……亮くん、怪我の方は命に別状ないって。刺された子達も浅い傷で済んだらしいわ」


その瞬間、特に張り詰めてもいなかったはずの気持ちが一気に緩んで体の力が抜けた。


「……そう、ですか」


かすれた声で一言だけ返事をすると、急に首と背中にずきずきっと痛みが走る。


どうやら俺は食堂に座り込んでいる間中、無意識に背中を丸めて俯いていたらしい。


今ぐっと伸ばした上半身が酷く固く凝っている。


そしてやっと自分が随分長い時間ここにいたことにも気が付いた。


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