雫-シズク-
「……でも」


目を伏せながら低い声でそう言った桜井さんの顔が、笑顔から硬い表情へと変わっていく。


「高校に上がってから更に手のつけられない子になってたけど、まさかこんな事件を起こすなんて……。学園を出たあとだったから……」


ほとんど独り言のように話す桜井さんは、ふとそこで俺の方を見て少し気まずそうにまた小さく笑った。


「とにかく亮くんのことは警察とご両親に任せましょう。電気消すから圭介くんももう寝なさいね。それじゃ、また明日」


「……はい」


そして俺は桜井さんが去ってからゆっくりと立ち上がった。


体が鉛のようにとても重い。


亮くんはこれからきっと、自分の罪を償わなければならないんだろう。


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