雫-シズク-
親から虐待を受けて、仲間からも裏切られた結果がこれか。


やるせない気持ちの俺は、途中で話すのをやめた桜井さんの独り言の続きに顔を歪ませた。


学園を出たあとだったから--


--良かった。


「……くっ、くくくっ」


俺はテーブルによしかかりながら胸に込み上げる感情を吐き出した。


「良かったね、学園に関係なくてさ。亮くんだってあんなことするなんて馬鹿だよ。……どいつもこいつも馬鹿ばっかりだ。くくくっ」


こんな時に笑いが止まらない俺だって。


でもおかしくて仕方ないんだ。大人の事情も、こんな所にいる子供の人生も。


しばらく暗闇の中で口に手を押し当てて声を殺して笑った俺は、どうしてもにやついてしまう口元をそのままにしてそっと部屋に戻っていった。




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