雫－シズク－

「そっ、そうだ！葵さん保護されてここに来たんでしょ!?また母親になにかされるかもしれないって誰かに助けてもらえないの!?」


少し遠くを見つめた葵さんが冷静な口調で答える。


「……たとえ学園や市の連中が引き止めたって、保護者はあいつなんだ。あいつが引き取るって言ったらそれでおしまいだよ。それに俺はもうすぐ社会人だぜ？無理だよ」


「そっ、そんな！だったら他になにか……！」


突然そこで葵さんが俺に笑顔を向けた。


その顔は悲しいような、悔しいような、なにかを決めたような……。


「あんがとな。お前のこと心配だけど、……ごめん」


これ以上なにを言っても無駄だという雰囲気をにじませた葵さんに、優しく拒絶されてしまった。


葵さんは見た目通りに頑固な人だ。一度決めたら自分の意志を曲げることはしない。