雫-シズク-
そう言うとおばさんが辛そうな顔をした。


「圭介くん、一緒にいたいのはすごくわかるけど……。お寺のお坊さんにきちんと預かってもらった方がいいんじゃないかな……?」


思っていた言葉と違うことを言われた僕は、胸の奥がずきんと痛くなってがっかりした。


「おばさんもそんなこと言うの?……味方だと思ってたのに」


もう僕を助けてくれる人は誰もいないと思うと、恐ろしくてまた涙が落ちてくる。


おばさんも僕の肩を抱きしめて、小さくごめんねってつぶやきながら泣いていた。


ねぇ、おばさんは大人なんだからどうにかならないの?


どうして別れなきゃいけないの?子供の僕じゃなんにもできないの?


もうすぐはなればなれになってしまうお父さんとお母さんを強く強く抱きしめて、冷たくて固い箱をやさしくなでたあとほっぺたをくっつける。


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