雫-シズク-
僕は我慢できなくなって小さな泣き声をもらし始めた。


そして怖いおじさんの考えを変えることのできない役立たずの自分に腹を立てる。


僕が子供だからいけないんだ。だからおじさんもおばさんも全部勝手に決めたんだ。……きっとこれが本当に最後のお別れになっちゃうんだ。


でも最後だなんて嫌だよ。絶対また会えるんだよね……?


一人になるのを想像するだけで体が消えてしまいそうになる僕は、このままおじさんが引き返してくれたら、おばさんがきつく止めてくれたらって何回も胸の奥でお願いした。




しばらく走るとでこぼこしたせまい道に入って、黒くて汚い木に囲まれた駐車場みたいな場所で車が止まった。


「着いたぞ」


おじさんはそう言うとさっさと車を降りて、空までとどきそうなたくさんの木が生える中にぽつんと建っている古い建物の方に歩き出した。


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