雫-シズク-
……コレハゲンジツ?


いくら呼びかけても返事がなくて意識があるのかもわからない。


どんどん血の気を失っていく顔色。


ぼうっと宙を漂う瞳に少しだけ緩んだ唇。


……ワルイユメ、ダヨネ?


一刻を争う状況なのに、まるで音のないスクリーンを見ているような錯覚を起こしてしまう。


弱まっていく呼吸、おびただしい出血、土気色に変わる肌。


……コノママダト、シ、ヌ?


そこで一気に現実に戻った俺は、認めたくない目の前の凄まじい光景を全身で拒絶するために、心が粉々に壊れるくらいの叫び声を上げた。


「うわあああああぁぁぁぁー!!」


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