雫-シズク-
誰でもいいから葵さんを助けて……!!


神様がいるなら俺の命と引き替えでいいから!!


俺の一番大切な葵さんをっ!!


口から狂ったようにおかしな声を出しながらそう願うと、突然部屋のドアが勢いよく開いた。


そして誰かがばたばたと近付いてきて俺達の間に無理矢理割り込もうとしてくる。


とっさに俺は傷口を塞ぐ手が離れないよう葵さんにしがみついた。


だってこの手を離したら、葵さんは俺を置いて一人で逝ってしまうかもしれない。


「おいっ!これは一体どうなってるんだ!?」


どこかで聞き覚えのある声だと顔を上げると、経理事務をしている坂井さんが俺にわめき散らしていた。


よく見ると視界のはしでは数人の指導員達が、悲鳴を上げながら部屋を出たり入ったりしている。


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