雫－シズク－

「うるさいわね！私の子供なんだから、その子の前で私がなに言ったって構わないじゃない！ここまで育てるのにいろいろお金だってかかってんのよ！それにせっかくの再婚に変な噂が立ったらどうしてくれんの!?」


まるで葵さんの存在を無視するように、様々な言葉が乱暴に空中を飛び交っている。


葵さん、こんな現実が正解なの？ただ別れを惜しむ俺が間違っているの？


親ってなに？


子供ってなに？


責任って？世間体って？命って？


ただ一人葵さんに寄り添っていた俺の中のくすぶった感情が、どんどんふくらんでいく。


そして一度飲み込んだはずのそれをとうとう自分の力だけでは抑え切れなくなってしまった。


「うるさいっ！うるさいうるさいうるさいいぃっ!!」


心の真ん中がぱぁんっと音を立てて弾け飛んで、気が付けば俺は葵さんにしがみついたまま思い切り大人達に向かって怒鳴り付けていた。