雫-シズク-
「ねぇ!葵さん死んじゃったんだよ!?もう二度と動かないし笑わないし、これからこの体もなくなっちゃうんだよ!?なのにどうしてみんな泣かないの!?悲しまないの!?」


その場の空気がぴんっと張り詰めて、みんなの視線が俺に突き刺さるのを感じる。


そんな中一気にまくし立てた俺は俯いたままはぁはぁと荒い息で体を起こすと、葵さんから離れてゆっくりと振り返った。


瞳を怒りでぎらつかせて立ち尽くす俺をそこにいる大人達全員が、戸惑いと驚きの表情を浮かべながら見ている。


「葵さんは薬飲んで自分の首切って血だらけになって……。いくら俺が止めてもやめてくれなかった。……ねぇ、どうしてそうなったの?なんで葵さんが死ななきゃいけなかったの?」


息苦しいくらいの激しい気持ちがうねりを上げて溢れ出してくる。


感情の波があまりに急激に許容範囲を超えたせいか、視界のはしが白くぼやけ始めて俺は目を細めた。


そして少しずつ狭まるその真ん中に葵さんの母親だけを映して、射ぬくように睨み上げる。


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