雫-シズク-
僕はびくんと体を震わせてお父さんとお母さんをひざから降ろすと、ずっととなりに座っていた美江子おばさんにそっと二人を渡した。


お別れなんかしたくないけど、僕にはもうこうするしかないんだ。


4人の大人がみんなそうしろって言うんだから。


美江子おばさんは小さくうなずいて、しっかり受け取ってくれた。


「おばさん、お父さんとお母さんをお願い……。僕……、僕……」


ひっくひっくしてしまって全然言葉が出てこない。


「……大丈夫、心配しないで。大丈夫だから」


そう言って顔を隠すみたいにうつむいた美江子おばさんも泣いていた。


僕は声を出して泣きたいのを我慢して、お母さんに買ってもらった小さな水色のかばんを持ってゆっくり車を降りた。


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