雫-シズク-
「嫌だよぉ……!僕を置いていかないで……!なんでもするから、いい子でいるから……!」


自分の声に追われるみたいに、僕は車に向かってがくがくする足を引きずって走り出した。


「おじさんお願い止まって!僕も乗せて!ねぇおばさん!」


車が止まっておじさんと美江子おばさんが笑顔でうそだよって言ってくれたら、そしてお父さんとお母さんとずっと一緒にいれたら、もうそれしか頭に浮かばなかった。


「圭介くん!」


びっくりした桜井さんが僕の腕を強くつかむ。


動けなくなった体なんかどうでもよくなった僕は、そのまんま叫び続けた。


「お父さーん!お母さーん!お願いだから戻って来てえぇー!一人にしないでえぇぇー!」


それでも車はぐんぐんスピードを出して、すぐに僕の前から消えてしまった。


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