雫－シズク－
慟哭。
消灯時間もとっくに過ぎ、しんと静まり返った真っ暗な部屋の中。


音が鳴らないよう気を付けながらカーテンを開け放ちそっと窓も開けると、重たい空気がじっとりと体にまとわり付いてきた。


生き物の気配すらない闇夜に浮かぶのは、まるで空に溶け出しているような輪郭もはっきりしない小さな月と。


乳白色ににじむ月光に照らされて鈍い灰色から徐々に深黒へとグラデーションしていく僅かな雲だけ。


「まるで息を殺して俺を見下してるみたいだな」


窓枠に手を置いた俺はそんな月に誘われたのか、無意識にこの学園に来てからの出来事を思い返していた。


親に焦がれて泣き続けた毎日、その親の自殺を知り心を凍結させた瞬間、孤立無縁の自分と周囲との扱いの違い、そんな立場を子供ながらに諦めて押し殺した心。


……思えばずっと肩身の狭さを感じ続けてきた。


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表紙・目次

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