雫-シズク-
適当に目に付いた束の一つを手に持って輪ゴムを取り、いくつものピンクの粒が綺麗に並ぶシートを見つめる。


自分が今興味本位の冷やかしなのか本当に死ぬ気なのか、まだはっきりと自覚はできていない。


でも気付けば俺は操られるようにぷちぷちと机の上に錠剤を弾かせていた。


目に浮かぶのは大量の薬を飲んで意識を朦朧とさせた葵さんの顔だけ。


完全に生気が抜け狂気まで含んだ虚ろな瞳が、あの時と同じように俺を見上げている。


「ここにあるやつ全部飲んだらあんな感じになっちゃうわけか。でもそんなに苦しそうじゃなかったよな」


変にさえた頭であれこれ冷静に考えながら、薬を机からこぼさないよう淡々と作業を続ける。


そして時間をかけて束の半分くらいまで出し終え少し疲れてしまった俺は、こんもりと集められた数え切れないほどの粒を見下ろし眉をしかめた。


「どのくらい飲めば死ぬんだ?こんなにあるけどまだ足りねぇの?」


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