雫-シズク-
一瞬ちぎれたかと期待した首がちゃんと頭と繋がっているのをちらりと確認すると、ちっと小さく舌打ちして邪魔な体を足で蹴るようにどかした。


すぐにでも起き上がって襲ってくるかもしれないと身構えたけど、予想に反してぴくりともそれは動かない。


そんな様子に拍子抜けした俺は、今度は床に這いつくばる人影に目を向けた。


ちらちらと未だまぶたの裏に浮かぶお袋の明るく柔らかな表情に苛立ち、ぶんぶんと頭を振って目を固く閉じる。


そしてそれを消し去るようにちぎれるほど強く唇を噛みしめて、かっと目を見開いた。


「あの笑顔も言葉も温もりも!全部嘘だったんだ!この偽善者!裏切り者!」


目の前の忌ま忌ましく変わり果てた体をぐしゃぐしゃに踏み潰してやろうと、勢いよく床を蹴る。


でも気持ちばかりが先走ってバランスを崩した俺は、もんどりうって無様に転んでしまった。


「いっ、てぇっ!」


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