雫-シズク-
でもすぐに甲高く変化していくと思ったその耳障りな声が不意に細くすぼみ始める。


消え入りそうなほど震えていくその声に酷く戸惑って睨んだまま耳を澄ませた。


「ううー、ううぅー……」


……まさか、泣いてなんかいないよな?


そんな疑問が浮かんだのと同時にはっきりと聞こえてきたそれは。


もう泣き声と認識しなければならないほど明らかに鳴咽していた。


嘘だろ……?


金縛りのように固まって動かない体で混乱した頭をもどかしく振ったけど、悲しげな声が耳に割り込んでくる。


……なんで?……なに泣いてるんだ?


俯せで床から頭と腕を上げた影と、仰向けで天井へ腕を上げた影がむせび泣く異様な光景。


その意味がどうしても理解できなくてじんわりと額に汗の粒が浮かびだしてきた。


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