雫-シズク-
身を切るような悲痛な声にたまらなくなった俺は、かさかさに渇いた喉に力を込めて叫んだ。


「なんでだよ!?お前らなに泣いてんだよ!?早く笑えよ!」


その言葉に反応するように低い声が聞こえてきた。


「……い……け、……ろ」


聞き取れないほどの小さな声が何度もなにかを言っている。


「けい……け、い……ろ。……いすけ、……きろ」


その言葉を理解した瞬間、がくんと足の力が抜けそうになって半歩後ろによろめいた。


それは確かに生きていた時の親父の声で、「圭介、生きろ」と繰り返している。


うわごとのように何度も何度も。


瞬き一つできずに目を見開いたまま、もう一方の影も見た。


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