雫-シズク-
「もう少しで終わりますよ。浅野さん、今の薬は大量服薬しても死亡する確率は低いです。また薬物を飲んで運ばれたら同じ処置ですからね」


淡々と水を出し入れする医者が冷たさも含ませた口調で脅すように言う。


たしかに俺は死ぬつもりで薬を飲んだけど、こんな結末が待っているなんて想像もしていなかった。


死に切れず無様に胃の中の物を吐き続け、生きたまま溺れているような地獄なんか。


……でも。


こんなに散々な現実が待ち受けていたことを。


心の底では喜んでいた。


そしてまだ頭の片隅に残る闇に向かって問いかける。


いいんだよな?


親父、お袋、俺生きてもいいんだよな?


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