雫-シズク-
桜井さんがカーテンと窓を開けるとほこりっぽい風がふわっと上がって、むずむずする鼻を手で押さえてくしゃみを我慢した。


「ここが圭介くんの部屋。中学生のお兄さんと一緒に生活するんだけど、今入院してて二週間後に帰ってくる予定なの。それまで淋しいかもしれないけど、頑張って早く慣れましょうね」


明るくなった部屋には机が二つと二段ベット、あとは小さなタンスが二つあるだけ。


かべは落書きや黒っぽいシミで汚れて、机やベットはあちこちテープや色の違う木でなおしてある。


お母さんが選んでくれた水色のふかふかしたじゅうたんもオモチャもなんにもない、狭くてつまらない部屋だった。


僕はこれからここで生きなきゃいけないんだ。大好きだった犬のぬいぐるみやお父さんと作ったプラモデルも持ってくればよかった。


でももうそれもできないって思うと、とっても淋しい気持ちになる。


「もう少ししたら他の子達も帰って来るから、とりあえず荷物を片付けておいてね」


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