雫-シズク-
それは予想通りあの闇に飲み込まれた時に俺が求めた物だった。


どんな作用があるのか調べたわけでもなく、表記されている名前すら目に止まらなかったけど、ひたすら自分の胃に流し込んだ物。


俺はくしゃくしゃに折れ曲がって潰れた薬のシートに数粒残った淡いオレンジの錠剤と、その名前と思われる濃いピンク色のカタカナの文字を改めてじっと見つめた。


「……マイ、……スリー」


葵さんが通ってた精神科から出された薬だろうから、きっと葵さんも飲んだんだろうな。


そう思うとなんとなく興味を覚えた。


危険な薬だったんだろうか?なにに効くんだろう?いつ飲むんだろう?


そうやって想いを張り巡らせていくと、ある疑問に辿り着いた。


……どんな人がこれを飲むんだろう?


でもいくら一人で考えてみても答えは見付からない。


そこで思考が途絶えた俺は小さくため息をつき、マイスリーと書かれたその薬をなんとなく自分の机の引き出しに入れた。




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