雫-シズク-
「気付けなかった私があなたのご両親を殺したんだって……。あの時あなたを引き取らなかった私は鬼だったんじゃないかって、自分を責めてきた。ずっと謝りたかったの。……ごめんなさい」


涙声で途切れ途切れ話すおばさんが、両手で顔をおおいごめんねごめんねと何度も呟く。


「そんな……、謝らないで下さい。おばさんのせいじゃないんだから」


それでも泣きながら謝り続ける姿を見て、おばさんも俺と同じように真っ暗闇をずっとさ迷ったんだと痛いほど実感した。


「そんなにもう……、泣かないで下さい……」


ついに堪えきれなくなった俺は、歯を食いしばりながらおばさんと一緒に泣いた。


まるで心にがちがちにこびり付いた大きくて真っ黒い膿の塊が、その小さな雫一つ一つに少しずつ溶かされていくようだった。




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