雫-シズク-
それから勉強漬けの毎日を送り、あっという間に二日間をかけての高二最後の実力テストがやってきた。


真面目に取り組む人間の方が極端に少なくて、決して静かとは言えない教室で淡々と問題を解いていく。


表面が傷だらけの腕時計の針を確認するたび、まわりの奴らと同じ時間が流れているはずなのにまるで別空間にいるような不確かな感覚におちいる。


それでも一教科ずつていねいにこなしていき、やっと今最後の数学のテストが配られた。


この二日何度も不安で胸がざわついたけど、俺が信じられるものはただ一つ。腕を切るのをやめて勉強にのめり込んできた過去の自分だけだ。


でもさすがに二年間のまとめのような今回のテストは、総合的に今までのものよりずいぶん難しかった。


開始の声が聞こえてから俺の耳はまわりの音を遮断し始め、終了のチャイムも遠く感じるほどだった。


「各列の一番後ろの生徒達、答案用紙を集めて持ってきなさい」


教室のすみに置いた椅子の上で半分寝ていた先生がのそりと立ち上がる。


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